民間学童とは?国内外の学童の状況や、その教育効果、選び方などを詳しく解説!

厚生労働省が2022年12月に公表した調査結果によると、学童(放課後児童クラブ)に登録している児童数は1,392,158人で前年比43,883人の増加、統計を取り始めた1998年以降の最高数でした。また、学童の数は26,683か所にも上りました。

運営主体でみると、公立公営は全体の約28%、公立民営は49.1%、民立民営は23.3%でさまざまです。これだけ多くの学童があると、選択肢が増える反面、自分の子どもをどの学童に通わせたら良いのか悩んでしまう保護者も少なくないでしょう。

本記事では、民間学童と公立学童の違いや、学童を取り巻く国内外の現状、その教育的効果、通わせるメリットやデメリット、選ぶポイントなどを詳しく解説します。学童という教育システムを俯瞰的にみることは、子どもを学童に通わせることを考えている親たちすべてにとって参考になるはずです。

目次

民間学童とは?

学童とは、放課後に自宅に帰っても、親が仕事などの理由でいない小学校就学児童のための支援事業です。運営主体によって大きく「公立学童」と「民間学童」に分けられます。

民間学童の目的

民間学童を含め、学童の目的は「子どもの生活のベースとなる安心できる場所」を提供することです。

本来、子どもたちは学校で努力して勉強し、放課後はそこから離れて自宅に戻ります。自宅は生活のベースとして、子どもたちがおやつを食べたり宿題をしたりする場所です。また、親や友だちとおしゃべりをしたり、だんらんを楽しんだり、身体を動かしたりもします。

放課後、すぐに自宅に帰れないとしても、子どもたちは同じ活動を必要としています。そうした環境を提供できるのが学童なのです。

放課後児童クラブとは?

放課後児童クラブと、学童は基本的には同じ事業を指します。

学童の制度は、国の施策では「放課後児童健全育成事業」と呼ばれています。厚生労働省が管轄し、児童福祉法や社会福祉法などによって規定、運営される事業です。事業の概要は、2016年に厚生労働省によって作成された「放課後児童クラブ運営指針解説書」の中に記載されています。

その解説書によると、放課後児童クラブは「放課後児童健全育成事業を行う場所であり、子ども及び放課後児童支援員等により構成される集団で営まれている」とあります。

では、「放課後児童健全育成事業」とは何でしょうか?その点について、児童福祉法第6条の3第2項は「小学校に就学している子どもであって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業」としています。

ここでいう「小学校に就学している子ども」には「特別支援学校の小学部」も含まれます。また、「その保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」の「労働等」には、保護者の疾病や介護・看護・障害等も含まれます。

事業が行われる時間帯は「授業の終了後」としていますが、ここには土曜日、日曜日、夏休みなどの長期休業期間も含みます。

放課後子ども教室とは?

「放課後児童クラブ」に似た国の事業に「放課後子ども教室」があります。放課後子ども教室とは、文部省科学省がすべての子どもを対象にしている取り組みです。安全・安心な子どもの活動拠点を設け、地域の人々の参画を得て、学習やスポーツ・文化芸術活動、地域住民との交流活動の機会を提供する取り組みを指します。

公立学童との違い

民間学童と公立学童の違いは運営主体です。厚生労働省の「令和4年(2022年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」は、設置・運営主体を「公立公営」、「公立民営」、「民立民営」に分けています。

ここでいう「公立民営」とは、自治体などの公立機関が設立し、その運営を民間に委託する形態をさします。その主な目的は従来「公」が行ってきたことを「民」のノウハウを生かして効率的に行うことです。

民間の運営主体としては、以下のような団体・組織・企業などが挙げられます。

  • 社会福祉法人
  • NPO法人
  • 運営委員会・保護者会
  • 民間企業

民間学童の歴史

民間学童を含む学童保育の現状を理解するためには、これまでの歴史を振り返る必要があります。ここでは、学童保育の歴史について概観してみましょう。

民間学童のはじまり

学童保育はそもそも国や自治体のトップダウンの政策・制度としてスタートした訳ではありません。学童保育は戦後、1940年代後半に民間の保育園から始まったとされています。具体的には、1948年に大阪の今川学園が社会福祉事業として学童保育を行ったのがはじまりと言われています。

その後、1960年代前半になって日本は高度経済成長期に入りました。産業構造が大きく変化し、働く人が増えて、学校から帰って来た子どもの面倒を自宅で見ることができる親が減っていきました。

公立学童のはじまり

国も1963年になってようやく学童という事業を法的に整備し始めました。その当時は「小学校3年生までの児童で家庭環境や交友環境、地域環境に問題がある」子どもたちが利用できるとするもので、今の学童保育とは随分様相の異なるものでした。

1966年には、今の学童保育に近い「留守家庭児童会」を当時の文部省がスタートさせました。これは学校の余裕教室を使って、17時くらいまで子どもの面倒を見る制度でしたが、1970年には終了し、短命で終わってしまいました。同時期に自治体も別個に動き出し、民間の学童保育に対して補助金を出す形で設立を支援しました。

放課後児童健全育成事業のはじまり

1976年に今の放課後児童健全育成事業の前身ともいえる「都市児童健全育成事業」が始まりました。1990年代に入ると、少子化が社会問題としてクローズアップされるようになり、そのための対策として働く女性のための「エンゼルプラン」と銘打って、「待機児ゼロ」を目指す取り組みがスタートしたのが1994年のことです。このエンゼルプランで学童保育(放課後児童クラブ)の設置が盛り込まれ、1997年には児童福祉法に「放課後児童健全育成事業」として法制化されました。

放課後子ども総合プラン

厚生労働省と文部科学省は連携し、2015年に「放課後子ども総合プラン」を策定し、前述した「放課後児童クラブ」と「放課後子ども教室」の一体的な実施を推進してきました。これにより、放課後児童クラブの約30万人分の整備が順調に進み、一定の成果は生み出されました。

2020年には放課後児童クラブの待機児童のさらなる解消を主な目的として、「新・放課後子ども総合プラン」を策定しました。その背景には、女性就業率が上昇し、さらなる共働き家庭の児童数の増加が見込まれており、「小1の壁」を打破することが求められている点が挙げられます。

民間学童の現状

前項では戦後の学童の歴史を概観し、高度成長期から労働環境の変化と共に学童の需要が日本でどのように増加し、それに対処するために国がどんな施策を行ってきたのかを解説しました。

ここでは学童の歴史を踏まえて、民間学童を含む学童の現状について説明します。

小1の壁」とは?

出典:https://bsc-int.co.jp/media/429/

民間学童の現状を把握する上で欠かせないキーワードの1つが「小1の壁」です。「小1の壁」とは、主に共働き家庭において、子どもが保育園から小学校に就学するときに直面するさまざまな問題を指します。

その主な原因は、保育園と学童保育の保育時間の違いです。子どもが保育園に通っていた時期は早朝保育や延長保育で育児と仕事の両立が可能だったのが、学童ではそれが難しくなるのです。

例えば、厚生省が公表した「令和4年放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」によると、「18時半を超えて開所している放課後児童クラブ数」は平日は60.8%で、長期休暇等の期間は58.7%でした。言い換えると、全体の約4割は18時半で閉所しているのです。

しかし、放課後に子どもが一人で過ごすには、小学校や学童からの下校、家での時間の過ごし方や安全など、親の心配が尽きません。また、小学校の時期は幼児から学童期、思春期へと移行する時期で知的能力や自我が飛躍的に発達する時期でもあり、一緒に過ごす大人の存在が欠かせません。

学童で子どもを預かってくれる時間が短くなると、閉所時間に合わせて子どもを迎えに行かなければならず、その分勤務時間を減らさざるをえません。時短勤務を選択することで、任される仕事の裁量が減ったり、キャリアに影響が出たりすることもあり得ます。場合によっては離職せざるを得ない人もおり、「小1の壁」は大きな社会問題となっているのです。

待機児童数の増加

民間学童の現状を把握する上で注目したい別のポイントは「待機児童の増加」です。放課後児童クラブの登録児童数は2023年に1,445,459人で過去最多となり、前年より53,302人増加しました。それに対して、待機児童数は16,825人でここ10年ほど高止まりしています。

出典:https://www.sankei.com/article/20230817-6FKIUGKJ4ZOKBGLZ3YARJZLBHA/

前出の「新・放課後子ども総合プラン」は、こうした現状を打破して待機児童を解消するために、2023年度末までに約152万人分まで受け皿を増やすことをうたっています。そのための施策として、全ての小学校区で学校施設を徹底的に活用することを目指し、新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施するとしています。

海外の学童保育

日本の民間学童の将来を考える上で、海外の学童保育の現状は参考になります。ここでは、5か国の事例を紹介します。

アメリカ

アメリカの「ビフォア/アフタースクール」や「サマースクール」が、日本の学童保育の位置づけにあたります。

「ビフォア/アフタースクール」は、学校の授業時間の前後に学校の敷地内や地域のコミュニティセンターで行われます。そのほか「ボーイズ&ガールズクラブ」というNPO団体が全米に学童保育を展開しており、「ビフォア/アフタースクール」の定員がいっぱいの場合に利用できます。夏休みや長期休暇の時も利用でき、子どもたちがさまざまなアクティビティーを楽しめるようになっています。

オーストラリア

オーストラリアの学童保育の半数以上は、民間によって経営されている民間学童です。また、ほとんどが小学校の構内に併設されており、保育時間は授業開始前(Before School Care:BSC)の午前7時から8時45分、放課後保育(After School Care:ASC)の午後3時30分から6時までです。オーストラリアでは午後6時以降も預かる学童保育は認可されていません。

BSCでは、朝食を食べていない子たちのために朝食を提供したり、室内ゲームやアート、クラフトなどのアクティビティを楽しんだりします。ASCでは、おやつが提供されます。オーストラリアでは学童保育監査ルールにより、ヘルシーな献立が求められており、野菜や果物などが中心で、ポテトチップスやクッキーなどが毎日準備されることはありません。

イギリス

イギリスでは、民間で学童保育が提供されない場合に限って、公的機関が対応するかたちを採っています。政府は2005年から拡大学校(Extended School/Extended Services)というコンセプトを打ち出し、学童保育を含めて学校を拠点とし、さまざまなプログラムを提供しています。

拡大学校では、「子どものためのさまざまなプログラム」、「小学校には8~18時、年間48週の学童保育」、「親子で一緒に遊ぶファミリー・ラーニングを含む親へのサポート」、「専門家のサービスへの取り次ぎ」、「地域住民への施設の開放」が必須とされています。

拡大学校の取り組みはイギリス国内で高く評価されており、7割の学校で親や子どもが学習に意欲的になり、3分の2の学校で学力向上に一定の効果があったとの声があります。また、過半数の親は子どものコミュニケーション能力や社会性が改善したと述べているようです。

イギリスの学童保育が日本と大きく異なる点の1つは、対象年齢の幅が非常に広いことです。日本の学童保育の対象は小学生で、多くは1年生から3年生です。それに対して、イギリスでは0~8歳、3~11歳、3~17歳など、施設によってさまざまであり、乳幼児や中高生が一緒に過ごす場所を提供しています。

別の特徴として、学童での活動の種類が豊富で、工作や調理、楽器演奏などに加え、植物を育てたり、地域住民と交流したりすることもできます。活動場所もさまざまであり、中にはコーヒーショップを短時間休業して、子どもたちがお茶を自分たちで淹れたり、ピザを焼いたりできるようにしているところもあります。

イギリスの学童保育の目的は「安全な場所でくつろぎ、人と交わるため(to unwind and socialize in a safe place)」とあり、単なる親の就労支援ではなく、子どもがさまざまな人たちと良好な関係を築き、家族や地域社会を形作る基盤形成として位置づけられており、日本の将来の学童保育のあるべき姿を考える上で示唆的です。

スウェーデン

スウェーデンの学童保育の最も大きな特徴は、2000年前後に行われた「保育と教育の統合」であり、これにより学童保育と義務教育は統合されました。

その背景には、保育を学びの延長線上にとらえる考え方があります。例えば、スウェーデンの学校庁は、学童保育は子どもへの有意義な自由時間と発達を支えるべきであり、そのためには安全で楽しく、刺激的な環境を提供しなければならない、としています。

そのため、スウェーデンの学童保育は、例外として民間学童が学校のそばにある場合もありますが、通わせる親は少数で、基本的に学校に併設されています。時間帯はたいてい朝6時、もしくは6時半からスタートし、夕方6時か6時半まで開所しています。学校は8時から8時半に始まりますが、共働きが多いスウェーデンでは、親は朝早くに子どもたちを学童に連れていき、そこで朝食を食べる子どもたちも少なくないようです。

ドイツ

ドイツでは出産後の早期職務復帰を支援するため、希望すれば乳幼児は必ず保育園や幼稚園に通わせることができます。そして、2026年からは平日は授業中を含め、最低8時間は終日の保育を受けられる権利が導入されるようになります。

ドイツでは国がおおまかな指針を設けているものの、実際の権限は各州にあります。そのため、どの州も2026年に向けて、小学校に隣接した学童保育を増設したり、学童教諭の不足の改善を図ったりしています。

民間学童の対象となる子どもの発達

子どもは誕生後、成人になるまで乳児期、幼児期、児童期、思春期・青年期という過程を経ます。6歳から12歳はその中で子どもの発達区分において「児童期」と呼ばれる時期にあたります。

児童期の前半には学習を通じて知識を増やし、さまざまな書き言葉や数量概念を身に付けます。9~10歳頃を基準に子どもは児童期後半を迎えます。その時期において子どもは特定の事物や場面にとらわれるのではなく、本質的で一般的なものをとらえるようとする、概念的、抽象的な思考パターンの初歩を形成しはじめます。

厚生省が作成した「放課後児童クラブ運営指針解説書」によると、児童期の発達には次のような特徴があります。

  • ものや人に対する興味が広がり、興味の探求のために自分を律することができる
  • 自然や文化と関わりながら、身体的技能や認識能力を発達させる
  • 学童、地域、学校など関わる環境が広がり、多様な他者との関わりを経験するようになる
  • 集団や仲間の中で規律や個性を培い、他者と自己の多様な側面を発見する
  • 「親からの自立と親への依存」、「自信と不安」、「具体的思考と抽象的思考」、「善悪と損得」など、さまざまな心理的葛藤を経験する

このような児童期の変遷を考えると、学童の対象となる子どもは6~12歳と幅があり、6歳と12歳では発達の度合いも全く異なることが分かります。

ここでは、低学年、中学年、高学年に分けて、それぞれの年齢層の子どもの発達について理解しておきましょう。

低学年(6~8歳)

この時期の子どもは空間認識や時間認識を獲得していきます。例えば、「コップの形状が変わっても中のジュースは変わらないこと」や「遊んでいる時間はあっという間に過ぎ去り、勉強している時間はなかなか終わらないが、実際に流れている時間は同じ」といった感覚です。

また、子どもの好奇心や興味も拡大し、新しい道具を使うことを試みたり、昆虫採集に夢中になったりしながら、自らの身体的技能を向上させていきます。しかし、不慣れなことに集中することが増えるため、怪我や事故のリスクも高まります。

さらに、子どもたちは小学校低学年期に計算能力や読み書きの基礎を習得し、自らの成長を自覚していきます。そのように自分の興味や好奇心を発達させ、大人に見守られることで努力し、課題を解決し、自信を深めていけますが、逆に言えばまだまだ大人に依存した状態といえるでしょう。

中学年(9~10歳)

この時期、子どもたちは「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」にぶつかります。これは、児童期の発達過程における質的な変化のことです。この壁を乗り越え、自己の多様な可能性を確信できるかは、その後の成長に大きな影響を与えます。

具体的には、子どもたちは論理性を身に付けたり、抽象的な言語を用いた思考を始めたりします。また、道徳的判断も結果だけでなく、動機も考慮するようになります。徐々にお金などの社会の仕組みについて理解するようになるのもこの時期です。

この「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」を乗り越えられないとどうなるでしょうか?例えば、うまく抽象的、論理的な思考を身に付けられなければ、勉強面でつまずいてしまいます。分数や割り算がうまくできないと、その後の学習内容も理解できなくなります。また、人間関係においては、子どもの「他者意識」が発達し、他の人と比較して嫉妬したり、相手を無視したりすることもあります。

出典:https://lee.hpplus.jp/column/1593653/

この壁を乗り越えるためには、具体的に褒めることで子どもの自己肯定感を育成することが大切です。また、家事を手伝わせることでも集団における役割を自覚させることができる上、子どもを褒める機会を創出することにも繋がるでしょう。さらに子どもは本を読むことで抽象的な思考や他者の視点に対する理解を培えます。

高学年(11~12歳)

学校内外のさまざまな活動を通じて、幅広い知識を見つけられるようになります。また、多様な時間概念を形成し、1日の学習時間、1週間単位、1ヵ月単位の計画を立てられるようになるため、子どもが主体的に遊びや生活を経験できるように親など大人が助けてあげることが大切です。

また、この時期、子どもたちは特定の友だちとの関係や秘密を共有することを大切にします。そのため、学童保育においてもプライバシーを尊重することは欠かせないでしょう。

民間学童と学校・地域との関係

民間学童を含め、学童保育は学校や地域と密接な繋がりを持っており、子どもの健全な発育のためには連携を強めることが必要です。ここでは、民間学童と学校や地域との関係について解説します。

学校との関係

子どもの生活の中で自宅、学校、学童保育での時間に連続性を持たせるために、親や教師、職員間での情報共有や交流は欠かせません。例えば、自宅や学童保育での子どもの様子の変化は、学校での行事や学習と因果関係がある場合が多いものです。

同時に、学童が子どもたちに関して職務上知り得た情報については、あらかじめ定めたルールに従って責任をもって管理し、扱わなければなりません。学校と学童間の情報共有に関しては本人にとって秘密とされる情報も含まれているため、保護者からの同意を得ることが必要です。

世界各国の学童の事例を取り上げましたが、学校の余裕教室や施設を利用する傾向が高まっています。日本でも今後、待機児童の受け皿確保のため、小学校の利用が促進されていくことでしょう。

上述したように、「新・放課後子ども総合プラン」では新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施するとしています。そのためには学校の理解や協力が欠かせません。利用の際には、事故や怪我を防止するための措置やルールの策定も事前に協議することが求められます。

また、学校施設を学童として利用する場合、単に安全対策を施せば良いという訳ではありません。冒頭で示したように、学童の目的が「生活のベースとなる安心できる場所を提供すること」であれば、校舎も校庭も居心地の良さを重視した空間整備をしていくことが求められます。それは世界196カ国で締結されている「子どもの権利条約」31条が保障する「遊びと休息の権利」とも調和します。

地域との関係

児童期の子どもたちは、学童で社会性を身に着けていきます。そのためには地域の行事に参加したり、地域との交流を深めたりすることが欠かせません。

小学生になると、子どもの活動範囲や興味の対象は広がります。学童の実施を限られた空間にとどめるのではなく、地域の公園や児童館、図書館などの公共施設なども積極的に活用することが重要です。

また、学童に通う子どもたちは学校から直接学童に向かい、学童から下校時刻よりも遅い時間に自宅へ帰ります。そのため、子どもが犯罪や事故に巻き込まれないように、学童の存在について知ってもらい、地域の人々の見守りによって安全が確保されるようにすることが求められるでしょう。

民間学童の育成支援内容

厚生省が作成した「放課後児童クラブ運営指針解説書」によると、学童では子どもたちが行う次のような活動を支援します。

遊ぶ 一人で遊ぶ、数人で遊ぶ、大勢で遊ぶ
くつろぐ 疲労の回復や気分転換のための休息、子ども同士の語らいの団らん
生活に必要なことをする 身の回りの整理整頓、衣類の調整、清潔の維持、おやつや学校休業日の昼食など
自主的に学習する 宿題、自習など
集団で生活するために必要なことをする 係活動、当番活動、遊び場の清掃など
静養する 病気やケガをした場合、気持ちを鎮める必要がある場合などに一時的に安心できるところで心身を休める
行事 年度初め、年度末などの生活の節目に行う行事、季節の行事、文化的な活動など

出典:「放課後児童クラブ運営指針解説書」p32を一部編集

子どもたちが以上に挙げた活動を行えるよう、学童側はどんな育成支援を行う必要があるでしょうか?支援内容は多岐に渡りますが、以下ではそのうちの5つを取り上げます。親は学童を選ぶ際に、以下の育成支援が適切になされているかを見極めることが重要です。

  • 子どもが学童の必要性を理解できるように助ける
  • 子どもが安心できるように迎え入れる
  • 子どもが生活習慣を習得できるように助ける
  • 子どもが主体的に遊びができるようにする
  • 子どもの栄養面、活力面を考慮したおやつを提供する

子どもが学童の必要性を理解できるように助ける

学童側は子どもが主体的に学童に通えるように、親と共にその必要性を理解できるよう助けます。

学童は学校と同じように継続的に通う場所です。自分が好きなときにだけ行って、通いたくなければ欠席するというのであれば、子どもたちの健全な育成は担保できません。そのため、学童を「親から強制されて行く場所」ではなく、「自分で主体的に通う場所」にする必要があります。

特に入所当初は学童で何をしたら良いのか分からないことに不安を感じる子どもが少なくありません。学童側の支援スタッフは子どもの様子を細やかに観察し、学童の過ごし方について丁寧に教えてあげることが大切になるでしょう。

子どもが安心できるように迎え入れる

学童側は子どもが学童で安心できるように迎え入れなければなりません。

子どもが安心できる環境を作るためにすべきことは多岐に渡ります。子どもが来所する前に、施設や遊具の安全点検をすることはもちろんです。そのほか、迎え入れる子どもたちの毎日の表情等を通して心身の状態を把握することや、病気やケガの場合は状況を把握し、速やかに保護者と連絡をとることも含まれます。

また、子どもにとって学童が安心できる場所になるためには、無理のない生活時間の区切りをつくることも大切です。なぜ区切りが置かれているのか、その時間帯に何をすべきなのか、子どもが納得し、理解できるようにします。

子どもが生活習慣を習得できるように助ける

学童は子どもが基本的な生活習慣を身に付けられるように援助します。その中には手洗いやうがいなどの健康や衛生に関すること、持ちものの管理や片付けなどの子どもの日常に関すること、集団生活を維持し、協力することなどがあります。

学童の支援スタッフはこうした習慣を子どもに押し付けるのではなく、身に着けることでどんなメリットがあるのか理解できるように助けます。例えば、靴やランドセルが乱雑だと自分の持ち物が見つからなくて困るのに対して、整理整頓をするとみんなが気持ちよく過ごせること、などと説明してあげます。

子どもが主体的に遊びができるようにする

学童の主要な活動の一つである遊びを、子どもたちが主体的にできるように支援します。

遊びには、電子機器や端末を使ったゲームなども含まれますが、学童では子どもたちが仲間関係をつくりながら、自発的に遊びを作り出せるようにします。例えば、支援スタッフは遊び相手になってあげたり、一緒に「ごっこ遊び」をしたりすることができます。子どもがその遊びのルールやコツを身に着けていない場合は、遊びの楽しさを損なわないようにリードしてあげることも含みます。また、伝承遊びの中から子どもが知らない遊びを紹介したり、アイディアを出したりして、子どもの遊びを豊かにする工夫をします。

子どもたちの遊びにはけんかが付き物です。ただ、学童の支援スタッフは単にけんかを解決することを優先させるのではなく、お互いの思いを受け止め、子どもたちの年齢や発達状態にも配慮しながら、お互いの考えの違いに気づいたり、葛藤や感情の高ぶりを和らげたりできるように助けます。けんかの収束の過程には多くの学びが含まれているので、それに子どもたちが気づけるようにしてあげることが大切です。

子どもの栄養面、活力面を考慮したおやつを提供する

学童は子どもの成長に合わせて、栄養面、活力面から必要とされる適切なおやつを提供します。

子どもにとっておやつは重要な意味を持ちます。補食としての役割だけでなく、気分転換し、遊びや活動のもとになる活力を充実させます。また、おやつの時間に子どもたちは一緒になって交友を楽しみます。

そのため、支援スタッフは子どもの来所や夕食の時間、生活の流れ、子どもたちの状態などを考慮し、おやつを提供する場所や内容、量を考え、ゆったりとした雰囲気でおやつをたのしめるようにします。

加えて、おやつの安全、衛生状態には万全を帰さなければなりません。それには子どもたち一人一人の食物アレルギーの有無について前もって調査し、スタッフ全員で共有することも含まれます。食物アレルギーのある子どもへのおやつの提供に関しては、保護者と相談しながら対応を決めなければなりません。

民間学童の教育効果

民間学童の多くでは、様々なプログラムが毎日提供されています。そこで、ここでは民間学童の主な教育効果について3つ取り上げます。

創造性を育む

1つ目として、子どもは民間学童で創造性を育めます。

近年のテクノロジーの発達によって多くの仕事がAIなどによって代替されていくと言われていますが、創造性は人間独自の能力のため、その重要性はとりわけ強調されています。

脳が飛躍的に発達する児童期は学童に通う時期と重なります。そのため、学童での活動の如何によって、子どもの創造性にも大きな影響が出るはずです。学童で実施される遊びやものづくり、ゲーム、自然を活用したアクティビティなどによって子どもたちは創造性を育めるでしょう。

自分の才能や興味を見つける

2つ目として、子どもは民間学童での活動を通じて、自分の才能や興味を見つけられます。

学童ではいろんな興味や関心を持つ、さまざまな年代の友だちや大人と知り会えます。一緒に団らんしたり、お菓子を食べたりしながら、自分と他者が異なっていることを認識していきます。そうしたプロセスを経て、自分の才能や興味を向ける方向性を模索していくのです。この時期に自分が好きなことを見つけることは子どもたちの自己肯定感にもつながります。

社会性や協調性を培える

3つ目として、子どもは民間学童で社会性や協調性を培えます。

学童は学校と異なり、さまざまな年齢層の子どもたちと同じ空間で時間を過ごします。また、地域社会にも開かれているため、学校以外のさまざまな場所で地域の大人と交流する機会もあるでしょう。子どもたちは自分とは年齢も背景も異なるさまざまな人たちとのコミュニケーションを通じて、社会で生きていくための基盤を作り上げていきます。

また、民間学童では様々なプログラムを一緒に取り組んだり、学童保育の自由時間に子どもたちは自分でくつろぐ方法を考えたり、遊びを作り出したりします。その過程で他の子たちと協力したり、時にはお互いの考えや感情がぶつかったりします。適切に自分の気持ちを伝えることを学んだり、お互いの都合を上手に調整したりするために試行錯誤し、協調性を学んでいきます。さらに、自分をちゃんと肯定できれば、他者のことも尊重することができ、良好な人間関係を培い、維持することができるようになります。

民間学童のメリット・デメリット

子どもを通わせる学童にはさまざまな選択肢があります。もっとも大きなポイントとしては、公立学童か民間学童のどちらを選ぶのかという点があります。ここでは、民間学童を選ぶメリットとデメリットについて解説します。

民間学童のメリット

開所時間が長い

民間学童の最大のメリットは開所時間が長い点です。上述したように、「小1の壁」と呼ばれる問題が生じる原因は、子どもが就学すると、親が預けたいと考える時間に対し、実際の施設の開所時間が短くなるためです。

公立学童の約4割が18時半には閉所になるのに対し、民間学童なら21~22時など遅い時間まで子どもを預けることが可能です。学童によっては送迎サービスを実施しているところもあります。

また、国立小学校や私立小学校は、家庭学習日や試験休み等により平日に学校に通わない日が公立小学校と比べると年間30営業日以上あります。さらに、朝6時に気象警報発令時など様々な理由で休校になります。こうした特別スケジュールに対応している民間学童もあります。

カリキュラムが充実している

民間学童の多くが子どもの能力開発を目的として、理系教育や自然教育、語学に力を入れています。

例えば、英語教育やプログラミング、理科実験教室、夏休みなどの社会見学やキャンプといったアクティビティなどを実施しているため、子どもはさまざまな活動に参加する中で自分の興味や関心の向けどころを見つけやすいでしょう。

夕食の提供がある

保護者が迎えに来る時間が遅い場合は、夕食の提供をしてくれる学童もあります。子どもと自宅に帰ってから夕食を作る時間や余裕がない人にとっては有難いサービスです。

民間学童のデメリット

費用が高額

民間学童の最大のデメリットは費用が高額になる場合があることです。公立学童に比べてカリキュラムやサービスが充実している分、やむを得ないことでしょう。

実際にどのくらいの金額がかかるかは民間学童の運営主体によって異なります。また、民間学童の所在地が首都圏の場合は、地方よりも当然高くなります。さらにサービス内容によって、預かり中心の場合と、教育プログラム中心の場合でも違いがでます。

そのため、一概には言えませんが、首都圏の場合は、週5で通わせた場合、預かり中心なら50,000円程度、教育プログラムが中心の場合は75,000円程度はかかるようです。夏休みなどの長期休暇時はさらに増額されます。

それに対して、公立学童は自治体によって異なります。しかし、東京都港区は月額3,000円、世田谷区は月額5,000円ですので、民間学童と比べると圧倒的にコストを抑えることができます。

施設によって違いが大きい

公立学童に比べ、民間学童は施設によるスタッフやカリキュラム、環境の違いが大きいです。そのため、民間学童を選ぶ際には前もって情報収集をし、比較することが大切です。

民間学童の選び方

上記を踏まえて民間学童に子どもを通わせたいと思うなら、インターネット上の情報だけでなく、実際に施設に足を運んで、体験イベントなどに参加して、子どもとの相性や雰囲気を目で直接見ておくことが重要です。

 以下のポイントをチェックしておきましょう。

安全対策はどうか?

民間学童を選ぶ上で最も重要なのは安全対策です。

どれだけ魅力的な独自カリキュラムを導入し、中学受験対策などもやってくれるとしても、子どもが安心して時間を過ごせる場所でなければ意味がありません。残念ながら学童での死亡事故なども過去に起きているため、施設の安全性はもちろんのこと、万が一の緊急事態の対応の体制、支援スタッフの意識の高さなどもチェックしておきたいところです。
また、最近では学童におけるわいせつ事件も残念ながら発生しております。万が一がないように、施設の運営方針などはしっかり確認しておきましょう。

家からどのくらいの距離か?

2つ目のチェックポイントは家からの距離です。

特に民間学童は公立学童に比べて家から離れている場合があります。送迎付きの学童も多いですが、学校を終えた子どもたちが1時間近くかけて学童に通うなら疲弊してしまい、本末転倒です。子どもが無理なく通える学童を選ぶことが大切です。

一日の定員は?

3つ目のチェックポイントは一日の定員数です。

この点、厚生労働省は公立の学童の定員として40名以内を推奨しています。学童の子どもたちが多ければ多いほど、スタッフの目が届かなくなってしまう可能性も高まり、子どもたちもたくさんの子たちと接することで疲れてしまいます。少人数制の民間学童がベストでしょう。

家庭のニーズと合致しているか?

4つ目のチェックポイントは自身の家庭のニーズと民間学童の方針が合致しているかです。

家庭のニーズには子どもの個性や能力を含め、民間学童に何を期待するかが含まれます。また、宿題をきちんとできれば十分なのか、科学や英語など別のテーマに関心があるのか、中学受験を前提にしているのか、などの点も考慮しておきましょう。

もし、民間学童に通わせ、専門的なプログラムを受講させることを希望しているなら、講師の教え方や資格などもチェックしておきたいところです。

さらに、夕食提供も含まれるかといった点も含めてチェックしておくと良いでしょう。特に夏休みなどの長期休暇で毎日お弁当を持たせるのは大変という場合には、ありがたいサービスです。

こどもクリエ塾について

ここでは、幼児教室「こどもクリエ塾」について紹介いたします。「こどもクリエ塾」の「クリエ」とは、次の3つの頭文字を組み合わせたものです。

クリエイティビティ 新たに創造すること
リーダーシップ 仲間の心を動かし、率先して行動すること
エクスパンディド アウェアネス オブ ワールド カルチャー 広い視野で世界を認識すること

 

2011年4月に開校した民間学童保育スクールで、21世紀に求められる、国際的に通用するリーダーシップと創造力を育てることを目的にしています。

目指す3つの力

こどもクリエ塾では、以下の3つの力を子どもたちが育むことを目指します。

自律的に活動する ・自分にとって大切な問題を見つける

・ゴールを設定して、実行する

・自分の考えや意見を人に伝える

言葉・情報・技術・知識を活用する ・言葉、数、図表などの使い方を工夫する

・知識の使い方を工夫する

・道具の使い方を工夫する

異質な集団と交渉する ・他人や地域の人とよい関係をつくる

・皆と力をあわせて協力する

・人の意見を聴き、考えを理解する

 

この3つの力はこどもクリエ塾の建学の精神である「正解が一つではない世界で、何が問題かを自分で考え、判断を下せること」、「これまでに存在しなかったものを創造できること」、「世界の人や、多様な文化・価値観を持つ人と話し合い、共生できること」とも結びついています。

子どもクリエ塾の3つの特徴

以上の3つの力を育成するためにこどもクリエ塾の学びには、次の3つの特徴があります。

.最長22時まで子どもが安心して快適に過ごせる場所を提供

学校の宿題や読書ができる自由時間と、自らの興味を出発点とするプロジェクト学習の時間に加えて、希望者には夕食提供もあり、最大22時までの滞在時間延長が可能です。

2.協働による学び合い

自分の意見を発表したり、話し合いをしたり、協力して実験に取り組むなどすることで、コミュニケーションを図りながら、協働による学び合いを行います。

3.少人数制でじっくり学ぶ

最大6人のグループで1人の先生が担当します。先生の役割は学びの促進を援助する「ファシリテーター」であり、「アドバイザー」です。

まとめ

日本では政府の対策も含めて、学童の目的に「親の共働きをサポートする」側面が強調されますが、子どもの能力が飛躍的に発達する児童期に多くの時間を過ごす学童にはもっと教育的側面を求めるべきかもしれません。その観点から考えると、民間学童も選択肢の1つとして考慮できるでしょう。

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